佐内正史インタヴューより

「Before Shooting--Lesson 1 CAMERA/FORMAT カメラとイメージの特性を知る 佐内正史」(インタヴュー=飯沢耕太郎)から。

−−主に使っている機材は?
「昔からPENTAXの6×7で90mm。基本的に一刀流ですね。」
−−どうして6×7を選んだのかな?
「やっぱり重みですよね。あと、自分は撮る時にストーリーの中に入るじゃないですか。これはそのストーリーに合っているんです。カメラを買った時から写真家としての物語が始まっているんだけど、そのストーリーが35mmのスナップではなくて、6×7のスナップだった」
−−しかしよくこんな使いにくそうなカメラを買おうと思ったね。6×7で撮られた他の写真に影響を受けたわけではないんだろ。だとすれば、あまり一般的なカメラではないと思うんだけど。
「店で見てびっくりしたんですよ。「35mmの形なのに、何このデカいの?」って。それで気になっちゃったんですね。あれは静岡の杉山カメラだった」
−−カメラの格好や佇まいに魅かれてしまったんだ。
「そう。物件とかを見ていてもそうじゃないですか。風水じゃないけど、なんか未来の予感がしたんだよね。やっぱり光って見えたと思う。かなり前の話だから物語になってしまっているかもしれないけれど、もうキラキラに光ってた(笑)」
−−それから標準の90mmレンズで撮り始めるわけだけど、他の選択肢はなかったのかな? 例えば広角を使うとか。
「使ってから思ったんですけど、やっぱりフィルムをやりたくて。広く見せるとか、遠くのものを近く見せるって手法じゃない。そのへんの道とか、抽象的なものを撮っていくんだけど、大事なものは"対象"ではなくて、そこから伝わってくる光線やオーラなんです」
−−ワイドや望遠を使うと、そこにあるオーラが変化したり、歪んだりしてしまうわけだ。
「変わりますね。記号みたいなオーラだけを撮ろうとしているから、"対象"じゃないんですよね。何を撮っても、その塊を撮ろうとしている。それは今も変わらないですね」