スピノザ『神学・政治論』

いまさら自分内でスピノザリバイバル。手始めによみはじめた『神学・政治論』が面白い。聖書は複数の人間が書いたものの張り合わせであること、預言者は必ずしも真を語っているわけではないこと(彼らは表象を見たのにすぎない)、奇蹟は神の力=自然の力であるとするなら問題にならないこと(それは単に人間の認識能力の問題にすぎない)、等々聖書の記述の問題点について突っ込んでいく。それが非常に一貫性を持って記述されている。
当時としたら、これだけ書けば確かに背後から切りつけられたとしても不思議もない過激な内容だろう(スピノザはそのマントを部屋に飾っていたという言い伝えがあるはず)。そして何より、この神学と哲学(すなわち神聖政治と世俗政治)の分離を唱えたこの書を1944年に翻訳出版していた畠中尚志氏は凄いと思わざるを得ない。スピノザ自然権概念について勉強してみたい今日この頃です。

神学・政治論 上巻―聖書の批判と言論の自由 (岩波文庫)

神学・政治論 上巻―聖書の批判と言論の自由 (岩波文庫)

神学・政治論 下巻―聖書の批判と言論の自由 (岩波文庫)

神学・政治論 下巻―聖書の批判と言論の自由 (岩波文庫)