カール・シュミット『政治神学』より

政治神学

政治神学

冒頭。

 主権者とは、例外状況にかんして決定をくだす者をいう。
 この定義は、限界概念としての主権概念についてのみ妥当しうる。なぜなら、限界概念とは、通俗書の粗雑な用語にみられるような混乱した概念ではなく、極限領域の概念を意味するものだからである。その定義が、通常の場合でなく、限界状況とのみ関連しうるものであることは、これに対応している。ここにいう例外状況とは、国家論の一般概念として理解すべきものであり、なんらかの緊急命令ないし戒厳状態の意味でないことは、以下で明らかとなろう。例外状況が、すぐれた意味において、主権の法律学的定義に適したものであることには、体系上または法論理上の根拠がある。すなわち、例外にかんする決定こそが、すぐれた意味において、決定なのである。なぜなら、平時の現行法規があらわしているような一般的規範では、絶対的例外はけっして把握しえず、したがってまた、真の例外事例が存在しているという決定は、完全には根拠づけられないからである。