江戸川乱歩「恐ろしき錯誤」より

江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者 (光文社文庫)

江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者 (光文社文庫)

 行っても行っても果てしのない、鈍色に光った道路が、北川氏の行手に続いていた。
 あてもなく彷徨う人にとって、東京市は永久に行止りのない迷路であった。
 狭い道、広い道、真直な道、曲りくねった道が、それからそれへと続いていた。