ハワード・ラインゴールド『思考のための道具』より

思考のための道具―異端の天才たちはコンピュータに何を求めたか?

思考のための道具―異端の天才たちはコンピュータに何を求めたか?

  • 作者: ハワードラインゴールド,青木真美,栗田昭平,Howard Rheingold
  • 出版社/メーカー: パーソナルメディア
  • 発売日: 1987/12
  • メディア: 単行本
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論理と計算というそれまではまったく異なると思われていたものを結び付けるために、ブールは二種類の量しかない数学系を着想した。その二種類の量とは、彼が"Universe"と呼んだ「全体集合」と"nothing"と呼んだ「空集合」であり、1と0の記号で表現された。特別な記号や操作方法を用いることによって、論理的命題を方程式に変換することが可能だし、普通の代数的法則にしたがって三段論法的結論を導くことが可能である。ブール代数を知っていれば、数学的な操作を行うだけでどんな特殊な前提条件の組み合わせにおいても、それがどのような論理的帰結をもつかを導くことができる。[……]
 ブール代数の重要な特徴は、論理演算を組み合わせて新しい演算を形成する方法、つまり論理演算集合を組み合わせて演算を形成できるということである。論理学の三段論法が一つの真理値表の出力を別の真理値表に入力できるように準備されることによって、0と1とに関する演算を用いて組み立てられる。たとえばandの演算の前と後に一回ずつnotの演算を入れれば、「または(or)」の演算を作ることができる。基本的な演算であるnotとandの二つをいろいろと配列することによって、加算、減算、乗算、除算の演算を作ることができる。このようにして論理学と代数学は本質的に、そして簡潔に関連づけられた。シャノンが指摘するまではだれも気付いていなかったのだが、これと同じ代数学で電気スイッチ回路の動作を示すことができるのだ。
 このことと同じくらい重要なのは、論理学上および代数演算の組み合わせが、記憶装置のオペレーションに応用できるということである。ブール代数は特定の情報−−データでも演算でも−−を蓄積できる状態をもつ手順を作り出す。つまり装置を作ることを可能にする。電気回路が論理演算と数学演算を行うことができ演算の結末を蓄積できるなら、デジタル電子計算機が設計できることになる。