「たった8秒のこの世に、花を」

某所で観た。
http://www.pg-web.net/pg/katudou/ICANOF/movieinfo.html

詩人・稲川方人の初監督作品。 彼女の友人である詩人の吉田文憲の企図に応えて、詩人・稲川方人が監督構成、撮影は辻智彦、録音に菊池信之、制作統括に映画作家の窪田信介などのスタッフ、そして出演に詩人・吉増剛造、漫画家・花輪和一、画家・毛利武彦、詩人・阿部弘一、漫画家・宮西計三らを迎え、日本画家・福山知佐子の半生を描き、「絵画」の底に見える「生命」の息遣いを見つめる異色のドキュメンタリー。

出演 福山知佐子 吉増剛造 毛利武彦 阿部弘一 吉田文憲 宮西計三 花輪和一

福山さんは植物、特に枯れてゆく花をモチーフに描かれる画家。会場には福山さんも来られていて、講演では非常に興味深い話をされていました。最近は銀箔や金箔の上に腐食した植物を描かれている作品が多く、そこに描かれている無機的なものと有機的なものが互いに浸食しあっている様が私も非常に好きな作家です。
この映画は、詩人の稲川方人が監督して彼女を撮ったドキュメンタリー形式の作品。新宿といった土地や彼女の病気(癌)をとりあげつつ、福山さんと様々な芸術家の人々との関わりや対話を描きつつ彼女を追って行く。結果的に、稲川監督は彼女に迫り損なっていると思うが(いろいろ事情はあるようだ)、その最後に失墜を提示して終わるところがいかにも稲川方人の詩を彷彿とさせ、そこに葛藤と魅力が感じられる。映像は文句なくよい。スタッフには港千尋の兄弟、「ソシエテ・コントル・レタ」を率いる港大尋を迎えていて音楽も素晴らしい。
http://www.k3.dion.ne.jp/~societe/
映画のタイトルも稲川方人の言葉。

輪になった見知らない人々の 手を握りしめていると
いい?大丈夫だから、すぐよ
たった8つだから、と誰かが言いました
やがて地上に激しい光が墜ちてきて
光の中で私は8つの数を数えました
8つの数は永遠に、私を
みんなを生かしてくれたのです

映画の冒頭で朗読されていたアルトーの一節にもしびれたので、帰りに『神経の秤』を購入して帰宅。いやこれすごい本だね。読んだら何か書きます(書けるのか?)。

稲川方人全詩集1967‐2001

稲川方人全詩集1967‐2001

アントナン・アルトー全集 1 神経の秤・冥府の臍

アントナン・アルトー全集 1 神経の秤・冥府の臍