中毒と食
最近、某ゼミで発表前なのでやたらと甘い物を口にしている。特にチョコばかり食べるので吹き出物が心配なのだが、どうやら後頭部に今回は出てきており、顔面にはあまり出ていないようでちょっと安心だ(でもどうやら一個できてきてもいる)。
私は何故か「書くぞ」と意識すると、むやみと甘味を食べたくなる。普段はチョコなんてそれほど食べないのだが、執筆時期はやばいほど食べる(とはいえケーキバイキングに出かけるスイーツ好きな人とは比べものにならないだろうけど←よしながふみ『愛がなくても喰ってゆけます。』参照)。タバコは吸わないので、体を動かさず考える時はこういう事でストレス荷重の発散をしてしまっているようだ。それに「脳の栄養になるのは糖質だけだ」という思いこみ(事実?)がそれに拍車をかけている様子。
ともあれ「物を書く」という行為は比喩的にもリテラルにも不健康極まりないものだと思う。しかしこればかりは、ある種のジャンキーになってしまったと思ってあきらめるほかない。ヤク中やアル中の文学者が多いのは、まさにそれが王道だからなのではないか? まあチョコ中毒なんて、それに比べたらお軽いもんだね。
ところで、バビナール中毒で苦しんだ太宰治の作品中、私が一番面白いと思ったところは『人間失格』の冒頭近くで「食べることも前提として受け入れられなかった」、というような一節があったことだ。失格した人間の観点からすると、生存のために食事をとることも一種の中毒症状なのかもしれない。
そういえば最近、食べものと文学・思想の関係について書いた本が結構出版されている。四方田犬彦の『ラブレーの子供たち』とか、廣瀬純の『美味しい料理の哲学』とか。前者は小説に出てくる料理をその通りに作って食べてみるもの、後者はドゥルーズの哲学を中心に「料理」において哲学を展開させるねらいの本で、どちらもなかなか面白い。私は全然美食家じゃないが、「食べること」というのを美味礼賛や安易な身体論に走ることなく、まさに「何故物を食べるのか」という問いにおいてとらえ直す作業が必要なのではないだろうか?
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