「科学と仮説」

ポアンカレの『科学と仮説』を、最早再版されない『世界の名著』で読む。考えれば中央公論社のこのシリーズ自体、ひとつの時代を象徴しているシリーズなのかもなぁ…。つうか全体の内容豪華すぎ。興味ない巻でも古本屋で見たら買うことにしよう。

目次をちょっと改変して載せておく。

二十世紀の科学思想…湯川秀樹井上健
物理学的世界像の統一…マックス・プランク
科学と仮説…アンリ・ポアンカレ
公理的思考…デヴィット・ヒルベルト
物理学と実在…アルバート・アインシュタイン
科学者と世界平和…アインシュタイン
原子物理学における認識論的諸問題にかんするアインシュタインとの対話…ニールス・ボーア
量子論的な運動学および力学の直観的内容について…ヴェルナー・ハイゼンベルク
量子力学の現状…エルヴィン・シュレディンガー
人工頭脳と自己増殖…フォン・ノイマン
科学と社会…ノーバート・ウィーナー
デオキシリボ核酸の構造…ワトソン、クリック
なぜ心は頭にあるか…マッカロー
精神の未来…キスホルム
医学の将来…セント=ジェルジ
人間の生物学的未来…レダーバーグ

私のような記号操作が苦手で(というかその前提が飲み込めず)早いうちに数理的世界から脱落しながらも、理数系の学問のコンセプトや世界観や成果にはその後も大いに興味があって(というか自分が分からなかった数学がどういうコンセプトで動いていたのかには多少復讐的な興味を持っていて)、理数系の入門書(ブルーバックスなんかも)が好きな人というのは潜在的に多数いるに違いない。
そんな傾向の人々にとって妥協せずに学問の高度な考え方が説かれている文章はやはり頼り。ポアンカレなんかは代数や幾何学の前提の仮説としての有用性を丁寧に説いていたりして、もっと小さい子にもこういう事を妥協せずに教えてくれる所は無いものだろうかと無いものねだりしてみたりしたくなる。