『ユリイカ』特集*ギャグまんが大行進

http://www.seidosha.co.jp/eureka/200502/
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■リジョイス! 文化祭 in DEEP
ギャグというエクスタシー(しりあがり寿×春日武彦
■巨匠たちの肖像
世の中はどんどんいいかげんになっていく。それでも廻る。いしいひさいち論。(安田謙一
かわうそ化するポストモダン 吉田戦車から見た日本社会(ドミニク・チェン)
モグラとサルの闘争 古谷実の反ブルジョア精神(小泉義之
■起承転結を脱構築する
性差と4コマ(矢部史郎
大阪は「ぼのぼの」やねん。 『あずまんが大王』から見た萌え、四コマ、マンガの現在(伊藤剛
自虐の詩』を奇跡と捨て置くのではなく 小池田マヤ論(栗原裕一郎
■メイド・イン・『ジャンプ』
黄昏のハジケリスト(澤井啓夫
ボボボーボ・ボーボボ』の悲壮なたたかい(武村知子
不可解な歌と、笛の音にのせて。 うすた京介と第三世代の笑いについて。しかも、とりとめなく。(足立守正
■デビュー20周年記念特別描きおろし作品
走れ!マッパでナニの道(永野のりこ
■必敗のフィギュール・断章
少女マンガのギャグ 武石りえこと永野のりこ小谷野敦
剥き出しの少女・ギャグ・マンガ 新井理恵『×─ペケ─』をめぐって(七尾藍佳
「無敵の人」への負け犬の遠吠え 松田洋子の長征に寄せて(太田晋
■ひらかなのポエティクス
いま詩ろたか詩(松本圭二
すべては「にがおえ」になる おおひなたごうのスタイル(石岡良治
■これはギャグではない 描線のデュナミス
児嶋都「笹江さん」における表情の問題(高橋明彦)
増殖式 駕籠真太郎漫画の笑いについて (阿部嘉昭
■その歴史−地政的配置
ギャグマンガマッピング2005(斎藤宣彦

パラッと立ち読みしただけだけど、おおひなたごう論を書いている石岡良治さんの論が面白い。
ギャグまんがを論じる際の難しさって、その論じる言葉自体がパフォーマティヴには「笑い」を抹消してしまう点にあるんじゃないかなと思うんですが*1。大抵はどんなに面白いギャグマンガについて書いていても、その文章自体が持つスタイルは笑いを伝えることはないでしょう。実のあることを言おうとすればするほど、そうなる。でギャグについては論じづらいってわけ。開き直ると「おかしければいいじゃん」的なところに行っちゃうし*2。その点石岡さんの書き方は、いい意味でゴリッとした文体がかえって妙なオモシロさを生み出している点で、稀有な文章だと思った。
おおひなたごうのマンガを真っ正面から論じながら、フロイトの「機知」を援用してるんですが、それがそこに引きつけるという感じではなく、本当に必要だから言及されている感じ。無意識とギャグの問題が論じられていて、おおひなた論としてもギャグマンガ論としてもなるほどと思いました。そして最後に載せられている、おおひなたごう直筆サインも腰砕け感満点でいいですね(笑)。

おやつ 1 (少年チャンピオン・コミックス)

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俺に血まなこ

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*1:これはおそらく「笑い」に関するジャンルの全体に関わることでは。

*2:追記。その意味で、ギャグの言葉とオースティンの言語行為論の突き合わせは面白いかもとか思う。あと個人的には、分析哲学系の本が例として引き合いに出す突飛な文章って、面白くってしかたないんですよねー。「どこから『マットの上の猫』という発想が?」とか、ツッコミだすとキリがなく……。