ジャック・デリダ『法の力』より

法の力 (叢書・ウニベルシタス)

法の力 (叢書・ウニベルシタス)

「第一部 正義への権利について/法(=権利)から正義へ」から。

 権威の起源、掟を基礎づける作用または掟の基礎になるもの、掟を定立する作用、の最後の拠り所になるのは、定義によって自分自身しかないのであるから、これら自体は基礎をもたない暴力である。これは、それら自体が、「非合法」または「正統でない」の意味で正義にかなっていないということを意味しない。それらは、それらが基礎づけをなす瞬間には、合法的でも非合法的でもない。それらは、基礎づけされたものと基礎づけされなかったものとの対立や、基礎づけ主義かそれとも反基礎づけ主義かの対立を越えている。ある法/権利を基礎づける(一例を挙げれば、それも単なる一例では済まない一例を挙げれば、ある法/権利の保証人としてのある国家を基礎づける)もろもろの行為遂行の成功は、それに先立つ数々の条件や協約(例えば、国内空間や国際空間における)を前提にするとはいえ、この当の諸条件・諸規則・諸協約−−そしてそれらの支配的解釈−−の起源と考えられるものにおいて、またしてもこの同じ「神秘的」限界が現れるであろう。
 私の描いた以上のような構造において、法/権利は本質的に脱構築可能である。