吉野朔実『少年は荒野をめざす』
またしても後輩から奪い取るように借りる。
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「自分が女性に生まれてきたこと」を認めることができず、自分の中に「少年」を住まわせている少女・狩野都と、狩野と双子のように似ている少年・黄味島陸を軸として展開するストーリー。女性であることを否認していた狩野が、陸との関係の中で、だんだんと自分の中の少女性を意識しはじめるのだが…。
闊達で、どんなに近くに見えても空のように遠い存在でありながら、狩野にとって自分の分身のように感じられる陸。彼に触れることによって、少女が自分の変化を受け入れながら自分のあり方を認めていく話…と言ってしまうのはちょっとまとめすぎか。
少女のなかにも少年は住んでいて、少年のなかにも少女は住んでいるのか…とか考えさせられる。性への目覚めというのは、自分とは違う自分との出会いなのかもしれない。だが現実になんらかの形で性を意識に受け入れる時には、自分の中の非性的なものとしての「少年」や「少女」たちは荒野へと走り去ってしまうのだろうか。
確かに話の最後で、陸や、狩野を支えていた男性はどこか遠くへと去ってゆく。だが、それは死ではなく、いなくなってしまったのでもないだろう。この空の下のどこかでまだ、彼らは地平線を目指して何処までも進んでいるはずなのだ。例え彼らの姿が消え、目に見えなくなったとしても。
ふり向くと
私の記憶から
とき放たれた夢の少年は
荒野をめざして走ってゆくのだ
あの時
そうしようと
したように
何処までも
何処までも