グレッグ・イーガン
方々で話題のグレッグ・イーガンを読んでいるよ。とはいっても、最新刊の『ディアスポラ』ではなく『宇宙消失』と『祈りの海』を読了して、次は『万物理論』を読もうとしているところ。
イーガンは去年ぐらいに『順列都市』だけ読んでいたんだけど、正直言ってさっぱり世界観にジャック・インできないままムリヤリ読み終えた感じだった。しかし最新刊が出ているなぁ…と思い『宇宙消失』に挑んだら、おもろいおもろい。やっぱり同じ作家でも最初にどの本に当たるかは重要ですね。
『宇宙消失』は、量子力学の多世界解釈とからんだハードボイルド風の物語が、何度かどんでん返しを行いながらジェットコースター状に進んでいく。ネタバレになるから詳しくは書けないけど、一番面白かったのは主人公が「アンサンブル」に「転向」するという論理的過程。この種の「転向」に関する話は他の作品にもしばしば通底しているので、イーガンのずっと抱えている問題意識なのだろうかと思わされる。
また他の短編でも、人間の感情がすべて「神経反応」だったとしても、だからこそその先に生きる問題があるというような話(薬物・機械でコントロール可能な神経反応の束から、どうやって主体性が現れるか)や、可能世界の話(無限に存在する可能世界を横断して存在することができる主役が出てきたりする)がよくテーマになっている。あとよく「信仰」の話も出てくる。
ちなみに本人は、
最新の科学があきらかにする世界観(現実がどう動いているか)は、日常的・常識的なものの見方となじまないことが多く、それをドラマチックに仕立てることはむずかしい。だがぼくは、地動説が最初に提唱されたときに人々が感じただろうような驚きを、最新の科学の成果−時空や心の構造といった問題−を追究することで読者にあたえたい
という旨の発言をしているようです(『祈りの海』所収の山岸真による「編・訳者あとがき」より)。
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