本屋を比べてみる

でもそんな冬空の下、年内にやっておきたいことをやっておくためニット帽かぶって家を出て、ついでに買いそこねていた『ユリイカ多和田葉子特集号が今年中にほしかったので、東京駅まで少々電車に揺られて行ってきたのです。多和田さんの幼き日の原稿の文章がかわいいんだよーん。
ユリイカ』2004年12月臨時増刊号 isbn:4791701283

しかしなぜわざわざ東京駅か? 言うまでもなく、でっかい本屋があるからです。地元駅前の書店に『ユリイカ』のバックナンバーが置いているなどということは、99.99%期待できやせん。いきおい、巨大書店のなかでも確実に置いてそうなところが頼り。
そして巨大書店が集まってる比較的近いところといえば東京駅。間違いない。定期の都合で、新宿や池袋はパス。お茶の水ではJRの駅から歩かねばならぬわけよ。雪の日にそれはないね。

さて、2004年+東京駅前とくればその解はオアゾ(丸ビルも可ですが)。今年は丸善超弩級の売り場面積をもった本店を出して、耳目をさらいました。さらわれた方は目も耳もなくなってしまったんで、一度丸善に行って返してもらわねばと大変でしたわい。
しかし、一ヶ月前くらいにようやっと一度行ってみたんですが、オアゾ丸善はそれほど好きくない感じだったのです。それゆえ、今日は八重洲ブックセンターへ。ぐるぐる店内をめぐり『ユリイカ』を発見。同時に他の本にも(予想通り)目移りしてしまい、いったん頭を冷やしに店外へ。近くのサンマルクでコーヒーを飲んだ後で戻り、また散々悩んだ挙句、結局一万円ちかい散財……。
年明けのバ、バーゲンのための予算がぁ〜。

でも、ふとなぜ自分がオアゾ丸善をあまり好きではないのか、八重洲BCと比較してみたら、その理由がちょっとはっきりした気がしました。
ひとつは棚の並べ方ですね。八重洲はたいそう特徴的。『ダ・ヴィンチ・コード』が置いてある平積み棚の本の集め方なんて、ハンパなかったっす。ダ・ヴィンチ関連だけでなくて周辺分野の本もこれでもかという具合に集められてました(買わなかったんだけど)。売れている本だけじゃなくて、そんなに売れてない(だろう)本を並べていても、手にとらせるような魅力がありましたね。
やっぱり、「おー、そういえばこれとこれはつながっているなあ」というような、本棚を見ることが関心が広まっていくきっかけになっていると、本屋にいること自体が面白い。新しい分類自体をつくりだすような、発見感のある並べ方がされていれば理想ですね。行けばきっと発見があると思える書店なんて、あったら素晴らしいですよ。でもきっとこの点については、新しい方の丸善も、時間が経てばどんどん面白くなっていく(はずだ)と期待しています。

もうひとつは、こちらの方が大きい理由かもしれませんが、照明と棚の大きさ、空間の使い方でした。オアゾの方は、照明が異様にフラットな感じで、あんまりメリハリがない感じが。もちろん書籍が見えづらい照明などというのは論外で、そういうわけではないんですが、なんというか、まぶしいんですよね、店内が。光が強いというわけでもなくて……。見通しはいいんですが、透明度が高すぎて、かえって空間に余裕がない感じを受けてしまったような。あんまりウロウロする気にはなれなかったし、ちょっといるのに疲れたかな。ひとことで言えば、繊細さに欠けてる感じ。

八重洲の一階は照明もやさしかったし、天井も高くて、見通しはそれほどよくないくせに開放感がある気がします。おかげで相当時間つぶしました。なんというか、本屋には、やっぱりどこか「迷いこむ」感覚がないとダメなんじゃないかという気がしてしまうんですよね。客が、本の集積に対して歩みを進めて行きたくなるようなモメントを感じさせることは、書店においては重要なような気がします。丸善檸檬を置いて爆発させてみたい、というフォーブな感性すらかつて喚起させていた老舗でありますし、巻き返しを期待してるんですが。今のところ、巨大書店対決東京駅編は八重洲BCに軍配ということで。

しかし、八重洲BCはビジネス街のただ中にあるのに、なんで一階の一番花形っぽい区画が多大に文学コーナーに割かれているんでしょうかねえ。ビジネスマンは文学を読まないとはけっして言わないのですが(友人にバリバリのビジネスマンで文学を楽しんで読んでる人いるし)、多くの人が好んで買い求めるとは思えない。なにか理由があるのかもしれませんけど……行く度にいつも謎。まあ、わたしにはその方が面白いですし、ずっとそうあってほしいんですが。

本屋以外の他のものも比べてみようと思ってたんですが、今日はこのへんで〜。