イスラム圏のベール

田中宇の国際ニュース解説http://tanakanews.com/(4月7日配信号)を読んでいたら、イスラム圏の女性がベールなどで顔を隠すことについての興味深い話が書いてあった。一部だけ引用。

 中東イスラム世界で女性が髪の毛や顔を隠すことが義務づけられているのはなぜかということについては、地中海の農耕文明の古い習慣に基づいているという見方がある。

 地中海周辺の農耕文明は、土地が子孫に細かく分配されていくことを防ぐため、親は娘を、地縁血縁のない男性とは結婚させないようにする伝統が古くからあり、その一環として、娘は親族以外の男性に顔を見せない(見せると男たちが娘と結婚したがるから)という風習ができ、それが地中海世界の周縁部にあるサウジアラビアでも、イスラム教の発生以前から行われていた。

 たしかに、サウジを含む中東では今も、地縁血縁のある人どうしの結婚が多い。地中海の東側にある中東だけでなく、西側にあるスペインやイタリア南部などでも、女性がベールをかぶる伝統が存在し、これもヘジャブ[イスラム圏で女性が顔を隠す黒いスカーフ]と同根だと考えられている。

 ベールとヘジャブの文化は、古くは地中海全域にあったが、その後欧州では、宗教界の腐敗を嫌い、神と人との間に介在していた教会をすっとばして神と人間がつながろうとする宗教改革が行われた。それは、宗教界がおさえていた社会規範から個人を解放する動きとなり、ベールの着用義務は一部のカトリック教会の中だけに残り、社会一般には人々はベールを着用しなくなった。

この話だと、女性と土地の分配が地中海沿岸の農耕文明において重ねられていたということが指摘されていますねえ。ということは昔はキリスト教圏でもそうだったということですか。なるほど。